統計学的にがんを合併する頻度が高いことが指摘されていたIgG4関連疾患
岡山大学は、眼領域におけるIgG4関連疾患と悪性腫瘍(がん)の関連性をサイトカインレベルで初めて解明したと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科の佐藤康晴准教授、大野京太郎大学院生、大学院医歯薬学総合研究科の吉野正教授らの研究グループによるもの。研究成果は8月27日、英国科学誌Natureの姉妹誌「Scientific Reports」に掲載された。
画像はリリースより
IgG4関連疾患は2001年に日本人によって初めて報告された比較的新しい疾患単位で、涙腺、唾液腺、リンパ節、膵臓、胆管、後腹膜など全身のさまざまな臓器に腫瘤をつくる良性の病変。世界的に注目されている疾患で、日本においても厚生労働省の「難治性疾患等克服研究事業」の中で研究班が設置されており、平成27年7月1日に施行された難病法の難病にも指定された。近年、統計学的にIgG4関連疾患の患者は悪性腫瘍を合併する頻度が高いということが指摘されていたが、その関連性については未解明な点が多かった。
眼領域IgG4関連疾患とがんの密接な関連性を示唆
同研究グループは、眼領域に発症したIgG4関連疾患(IgG4-RD)、IgG4陽性細胞を多数伴う悪性リンパ腫(IgG4(+)MZL)、IgG4陽性細胞のない悪性リンパ腫(IgG4(-)MZL)の3群をもちいて、各病変部におけるサイトカイン(IL4, IL5, IL10, IL13, TGFb)のmRNAを定量解析した。その結果、IgG4-RDとIgG4(+)MZLの各種サイトカインmRNAの発現が統計学的に同じパターンであり、IgG4(-)MZLとは異なっていることが明らかになったという。このことから、IgG4(+)MZLはIgG4-RDを背景に悪性リンパ腫が発生している可能性が強く示唆された。
今回の研究により、眼領域IgG4関連疾患と悪性腫瘍に密接な関連性が示唆されたことで、今後、さらに各臓器におけるIgG4関連疾患と悪性腫瘍との関連性の研究が進み、IgG4関連疾患における悪性腫瘍の発生メカニズムの解明への糸口になり得ることが期待される。
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