ヒトの形質に与える影響については不明だったホモ接合度
理化学研究所は7月27日、ヒトゲノム配列におけるホモ接合度の程度が、身長や呼吸機能、学業達成度、認知機能の個人差に影響を与えることを明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究は、理研統合生命医科学研究センター統計解析研究チームの岡田随象客員研究員(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 疾患多様性遺伝子学分野 テニュアトラック講師)らの共同研究チームが参加する国際共同研究プロジェクト「ROHgenコンソーシアム」によるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature」に7月23日付で掲載されている。
ヒトゲノム配列において共通したゲノム配列を父親・母親の双方から受け継いでいる状態をホモ接合といい、ゲノム全体に占めるホモ接合の割合をホモ接合度と呼ぶ。一般的な集団においてホモ接合度の程度には個人差があることが知られているものの、それがヒトの形質(遺伝によって伝えられる性質や特徴)に与える影響については明らかになっていなかった。
約35万人以上のサンプルを対象に調査
「ROHgenコンソーシアム」は、ホモ接合度の程度がヒトの形質に与える影響を網羅的に調べる大規模なヒトゲノム解析を実施するため、2013年に結成されたプロジェクト。今回、同研究プロジェクトでは、世界中の100以上の研究施設から集められた複数人種・35万人以上のサンプルを対象に、大規模なヒトゲノム解析を実施。約35万人におけるホモ接合度の程度の個人差と、身体計測値、血液検査値、生理学検査値、社会学的因子の個人差との関連を調べたという。理研の同研究チームは、約3万人のサンプル解析を担当した。
これらのサンプル解析の結果、ホモ接合度の程度が、身長、呼吸機能(一秒量)、学業達成度、認知機能スコアに対して有意な影響を与えることが明らかになったという。さらに、ホモ接合度の程度が大きくなるにつれて、これらの形質の計測値が共通して小さくなることが判明した。
これらの研究成果は、ヒトゲノム配列がヒトの形質に与える新しいメカニズムの発見と考えられる。今後は、ホモ接合度との関連が指摘された形質を対象に、ヒトゲノム配列のどの部分がホモ接合の状態であると影響が大きくなるのかを調べることにより、具体的な感受性遺伝子領域の同定に繋がると期待できる。
▼関連リンク
・理化学研究所 プレスリリース