アバカビルがATL細胞に強力な抗がん作用を発揮
京都大学は4月27日、エイズ治療薬である抗ウイルス薬「アバカビル」が、成人T細胞白血病(ATL)細胞に強力な抗がん作用があることを見出したと発表。さらにそのメカニズムとして、がん細胞におけるDNA修復酵素の異常が原因であることを解明したという。
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この研究は、同大学医学研究科の多田浩平研究員、瀧内曜子大学院生、小林正行助教、高折晃史教授、武田俊一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Science Advances」に4月25日付で掲載されている。
成人T細胞白血病は、HTLV-1感染により惹き起こされる極めて予後不良の難治性血液がん。今回、ATLに作用するとされたアバカビルは、抗ウイルス剤で、エイズ治療の第1選択として広く使用されている。エイズはATLと同じヒトレトロウイルスHIV-1により惹き起こされる疾患として知られている。
がん細胞におけるDNA修復酵素TDP1が標的に
研究グループは、アバカビルがATL細胞ならびにHTLV-1感染細胞を選択的に殺すことを見出した。同剤は、ATL細胞に染色体断裂(DNA2重鎖断裂)を引き起こすが、これによってATL細胞におけるDNA修復機構の異常が示唆されたという。
そこで、2種類のスクリーニング法を用いて、その異常の責任分子を同定。これがTDP1という修正酵素で、DNAの3’端に不要な塩基等が取り込まれた際に、それを取り除く役割を果たしている。ATL細胞では、TDP1の発現低下のために、誤ってDNAへ取り込まれたアバカビルを取り除くことができず、DNAの断裂を惹き起こし、細胞死に至ることを証明したという。これにより、正常細胞には毒性のないアバカビルが、特定のがん細胞には強力な抗がん剤となることが分かった。そして、その標的分子がDNA修復酵素TDP1であることが判明したという。
今回の研究によって、ATLの新規治療法だけでなく、他の既存の抗がん剤との組み合わせにより新たながん化学療法の開発も見込まれている。また、同様のDNA修復機構異常を有する他のがんへの応用にも期待されている。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果