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自閉スペクトラム症などの病的な繰り返し行動を引き起こす仕組みを解明-東京医歯大

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2015年03月02日 PM03:00

脳のグリア細胞の異常が病的な繰り返し行動を引き起こす

東京医科歯科大学は2月23日、同大学・難治疾患研究所・分子神経科学分野の田中光一教授と相田知海助教の研究グループが、九州大学、東京大学、慶應義塾大学、理化学研究所、ドイツのLudwig-Maximilians 大学との共同研究で、脳のグリア細胞の機能異常が強迫症や自閉スペクトラム症で見られる繰り返し行動に似た行動異常を引き起こす事を明らかにしたと発表した。


画像はプレスリリースより

病的な繰り返し行動は、強迫症・・トゥーレット症候群等に共通して認められる症状で、日常や社会生活に著しい支障を来たす要因の1つである。病的な繰り返し行動は脳の興奮性の亢進に起因すると考えられているが、その詳細な機序は不明で、現在の治療法では不十分だ。

グルタミン酸は、脳の興奮性を亢進させる事が知られており、その過剰状態が繰り返し行動の発現に関与することが推定されている。今回の研究では、グルタミン酸の代謝を制御するグリア細胞に着目し、その過剰状態が病的な繰り返し行動に関与することを、モデルマウスを用い、解析したという。

中等度・重度アルツハイマー病治療薬「メマンチン」で改善

今回の研究では、グルタミン酸の過剰状態を再現するため、グリア細胞に発現するグルタミン酸輸送体GLT1に着目。GLT1は、興奮性神経伝達物質として放出されたグルタミン酸をグリア細胞内に取り込み、細胞外のグルタミン酸濃度を低く保ち、その過剰状態を防ぐ役割を担っている。そのGLT1をさまざまな時期に欠損させたマウスを作製したところ、GLT1を性成熟期以降に欠損させたマウスでは、顔や首を中心に、激しい脱毛・皮 膚損傷が出現することを発見。このマウスを詳しく調べたところ、皮膚に生来の異常はなく、毛繕い行動の異常な繰り返しが、皮膚損傷の原因であることを明らかにしたという。

また、毛繕い行動の反復に加えて、突発的に全身を激しく震わせる wet-dog shakeと呼ばれる行動の回数も大幅に増加。脳の神経活動を調べたところ、このマウスの脳の興奮性は亢進しており、特に運動の制御にとって重要な大脳皮質-線条体間のグルタミン酸による情報伝達が過剰に活性化されていることが明らかになった。そこで、グルタミン酸受容体を阻害し、神経活動を抑制する作用があるメマンチンをこのマウスに投与したところ、これらの病的繰り返し行動は、即効性にかつ強力に抑制されることを確認したという。

今回の研究結果により、強迫症・自閉スペクトラム症等に伴う繰り返し行動の病態解明や、新規治療薬の開発が期待できると研究グループは述べている。

▼外部リンク
東京医科歯科大学 プレスリリース

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