GLP-1を介してインスリン分泌を促進するオステオカルシン
九州大学は10月6日、骨の細胞が作るオステオカルシンを長期間経口投与することで全身の代謝が活性化すること、経口投与したオステオカルシンの一部は活性を保った状態で24時間以上消化管内に留まり、循環血液中にも存在し続けることを明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、同大大学院 歯学研究院口腔細胞工学分野の平田雅人主幹教授、溝上顕子助教と同大大学院歯学府博士課程4年安武雄氏らの研究グループが、九州歯科大学応用薬理学分野の竹内弘教授のグループと共同で行われたもの。
骨の細胞が作るオステオカルシンは、全身のエネルギー代謝を活性化するとして、近年注目を集めている。同研究グループは2013年に、オステオカルシンがインクレチンのひとつであるGLP-1を介して、インスリン分泌を促進することを初めて明かしていた。
また、オステオカルシンを経口投与しても効果があることも明らかにしていたが、長期間飲み続けた際に全身のエネルギー代謝にどのような影響を及ぼすかまではわかっていなかった。さらに、経口投与したオステオカルシンがどの程度血中に吸収され、どの程度消化管に残るのかも不明だったという。
糖代謝改善効果の大部分はGLP-1を介したもの
研究グループが雌のマウスに、離乳直後から週3回、3か月にわたってオステオカルシンを飲ませたところ、空腹時の血糖値が低下し、耐糖能が改善。そのマウスの膵臓を調べたところ、インスリンを合成・分泌するランゲルハンス島のβ細胞が増殖し、ランゲルハンス島が増大していることがわかったという。それに伴い、インスリンの分泌量も増えていることが確認された。
続いて、GLP-1受容体のアンタゴニストであるexendin(9-39)を事前投与して、GLP-1の作用を阻害した後に同様の実験を行うと、これらの効果は見られなかった。これにより、オステオカルシンによる糖代謝改善効果の大部分は、GLP-1を介したものであると考えられるとしている。経口投与したオステオカルシンの動態を調べたところ、わずかな量が消化液で分解されずに小腸まで達し、少なくとも24時間程度留まること、吸収されたオステオカルシンは全身の循環血液中に存在することも判明したという。
経口投与は医療従事者の手を必要とせず、簡単かつ安全な投与方法という利点がある。経口投与によってさらにオステオカルシンの血中濃度を上げることができれば、さらなる代謝改善効果が期待でき、今後は吸収を促進するような物質の同定とその併用など、投与方法の開発が期待される。
▼外部リンク
・九州大学 プレスリリース