注目される小児遺伝性疾患「ファンコニ貧血」の病態完全解明へ前進
京都大学は5月2日、同大放射線生物研究センターの高田穣教授、海野純也研究員らの研究グループが小児の遺伝性疾患として知られるファンコニ貧血(FA)に関し、その病態形成の中心となるキー分子のFANCD2が、DNA修復機構において中心的役割を果たすCtIPタンパク質を結合、その制御を行っていることを新たに見出したと発表された。同研究成果は、米科学誌「Cell Reports」に掲載されている。
(画像はプレスリリースより)
ファンコニ貧血症は、DNA損傷修復の欠損による典型的な病態であり、家族性乳がんと原因遺伝子が共通であることなどから、学術的にも重要性が高く、その病態の完全解明が目指されている。研究グループは今回、FANCD2タンパク質が結合する分子をプロテオミクス手法により解析し、パートナーであるFANCIタンパク質だけでなく、DNA損傷修復において重要なCtIPタンパク質が結合していることを発見したという。
遺伝性難病やがんの新規診断治療法開発に期待
研究グループはさらに、このFANCD2とCtIPに関し、さまざまな手法を用いた研究を重ねることで、これらが関わるDNA修復ステップのメカニズムを見出している。
まず、FANCD2とFANCIにより形成されるID複合体は、DNA損傷に応答してユビキチン化され、DNA切断時にはハサミとして機能するFAN1タンパク質、およびSLX4-XPF複合体をリクルートする。この際、それとは独立にCtIPタンパク質もリクルートされるという。その後、DNAが切断され、さらにCtIPが切断された末端を削り込んでいた。この削り込みステップは、その後に生じるDNA相同組換えのための必須のプロセスとなっているという。
今回の研究成果は、ファンコニ貧血症の病態解明を進める重要な一歩であり、同様の遺伝性難病やがんの新たな診断治療法開発につながるものとみられる。また、CtIPタンパク質は近年、放射線などによるDNA損傷の修復において、中心的役割をもつことが明らかとなり、大きな注目を集めている分子でもある。このことから研究グループでは、この発見をファンコニ貧血症の病態解明のみならず、放射線応答におけるCtIPの制御メカニズムの理解にも寄与する、重要な意義を持つと考えられるとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
京都大学 お知らせ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2014/
FANCD2 Binds CtIP and Regulates DNA-End Resection during DNA Interstrand Crosslink Repair
http://www.cell.com/cell-reports/abstract/