東京医科歯科大学らとの共同研究により
慶應義塾大学は11月18日、40年前に承認・販売されている消化管運動改善薬・臭化メペンゾラートが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として有望であることを発見したと発表した。
(この画像はイメージです)
これは同大学薬学部の水島徹教授、田中健一郎助教、同大学医学部の鈴木秀和准教授らが、同大学、東京医科歯科大学、九州保健福祉大学との共同研究により見いだしたもの。研究成果は科学雑誌「Nature Communications」(電子版)に掲載され、また11月13~15日に中国で開催された国際学会「Drug repositioning 2013」でも発表された。
既承認薬の新しい薬理効果を発見し、別の疾患治療薬として開発
最近、発売される新薬の数が減少してきている。そこで、水島教授らが提唱し推進しているのが、ヒトでの安全が充分に確認されている既承認薬の新しい薬理効果を発見し、別の疾患の治療薬として開発(適応拡大)する創薬戦略、ドラッグリポジショニング(DR)。DRの利点は、臨床試験で予想外の副作用が発見され、開発が失敗する可能性が少ないことと、既にあるデータや技術を利用することで、開発にかかる時間とコストを大幅に削減できるところにある。DRを推進するため、水島教授らは独自に既承認薬ライブラリーを整備。今回の研究も、肺気腫を抑制する薬剤をそのライブラリーから検索するという手法をとったという。
気管支拡張作用と抗炎症作用を併せ持つ
水島教授らはエラスターゼを投与し肺気腫を発症させた動物モデルを用いて、メペンゾラートが肺気腫を顕著に抑制することを見いだしたという。
メペンゾラートは抗コリン作用を介して消化管運動を抑制する医薬品で、消化管運動改善薬として40年以上の使用実績を持つ。水島教授らは、メペンゾラートが抗コリン作用とは無関係に活性酸素を減らして炎症を抑えること、これにより肺気腫を抑制することを見いだしたとしている。
また、メポンゾラートが抗コリン作用を介して気管支を拡張させること、その程度は現在COPD治療に使われている気管支拡張薬と同程度であることも水島教授らは見いだし、メポンゾラートを気管支拡張作用と抗炎症作用を併せ持つ世界初の医薬品であるとしている。
研究グループは今後、COPDで苦しむ患者に早く治療薬を届けるため、またDRの有用性を証明し発展させるために、メポンゾラートをCOPD治療薬として開発する予定だという。(小林 周)
▼外部リンク
慶應義塾大学 プレスリリース
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000cqg