オキシトシンというホルモンは、愛情や信頼、幸福などといった感情とリンクしており、まさに恋するホルモンと言えます。このホルモンは、癒やしのホルモンや愛情ホルモン等と呼ばれることもあり、一般にはほんわかしたプラスのイメージを持たれていました。
ところが、新しい調査ではオキシトシンがストレスと関係して、不安や恐れなどを引き起こすことが分かったのです。
このため、友人に嫌われたり、上司に不当に扱われたりといった、マイナスの人間関係を感じた場合には、不安や恐怖心が起こるのだそうです。一方で、自分が愛されていると感じたり、必要とされていると感じたりすると、満たされた気持ちになるのです。つまりオキシトシンは、心の健康状態を良くすることも悪くすることも出来る諸刃の剣なのです。
ラットを使った実験ではこんなものがあります。オキシトシンに反応しないようにしたラットと、オキシトシンに過剰に反応するようにしたラット、通常のラットを、攻撃的なラットと一緒にして社会的ストレスを与えました。
その後一旦攻撃的なラットを隔離し、6時間後にもう一度攻撃的なラットと接触させました。すると、オキシトシンに過剰反応するラットでは、以前の経験を覚えていて、恐怖の反応を見せたそうです。
このことから、オキシトシンが過去の社会的なストレスを記憶に植えつけることで、後に同じような状況を経験すると、不安や恐怖を呼び起こすことが分かりました。
プラスの感情と、マイナスの感情を共に引き起こすオキシトシン。その秘密は、他の人との関わりなど社会的なストレスについての、心のアンテナの感度がアップすることにあるようです。自分自身でコントロール出来るものではなさそうですが、周りの人と調和の取れた関係を心がけることで、オキシトシンがプラスに働いてくれるかもしれませんね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Fear-enhancing effects of septal oxytocin receptors
http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/