アメリカでは4月になって、緊急避妊薬を15歳以上であれば、オーバーザカウンター薬として、処方箋なしで購入できるようにするとの判決が下りました。実質上妊娠可能な全年齢とも言える決定に対して、様々な物議をかもしています。
緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用することで、受精・着床を妨げ、妊娠しないように働きかけるホルモン剤です。性交前に用いる予防と区別して、Plan BやMorning After Pillなどと呼ばれています。アメリカでは、1999年の発売から、2006年までは服用に関して医師の処方を必要としていましたが、以降、17歳以上は医師の処方は不要のオーバーザカウンター薬として扱われるようになりました。
実際の利用数も、2002年の調査では、使ったことがあるとする女性は4%程度でしたが、2006年からは増加し始めて、2010年では11%となりました。
推進派は、医療関係者や公衆衛生関係者が多く、望まない妊娠や、人工妊娠中絶を防ぐための「勝利(Victory)」としています。一方で、女性の人権保護団体などは、緊急避妊薬がすべての年齢の女性に対して安全であると確定したわけではない。
10代の少女、低所得層、知識を得る機会のない女性たちが、リスクも分からないままに乱用する恐れがあるとして批判しています。実際に、低所得層の女性では、複数回使ったことがあるという調査結果もでています。
また、コンドームでの避妊を行わない人が増えると、性感染症のリスクも高まるとの指摘もありますが、これは通常のピルなどの避妊法に関する批判と共通しています。
日本では、現在も医師による処方がなければ服用することはできません。女性の健康を考えると、やはり「緊急」の避妊ではない、従来の避妊方法を行った上で、本当に必要なときのみ用いるべきだという考えが一般的です。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Use of emergency contraception among women aged 15-44(PDF)
http://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db112.pdf
FDA approves Plan B One-Step emergency contraceptive without a prescription for women 15 years of age and older
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/
Women’s Health Groups Angered By Morning-After Pill Moves
http://www.npr.org/blogs/health/2013/05/02/180626864/
Plan B One Step
http://www.planbonestep.com/