イギリスでは、このところ新薬の開発状況が停滞していることが心配されていました。
ところが、過去30年で、市場に出回った薬の数はむしろ、増加傾向にあります。この調査はバーミンガム大学が行い、British Journal of Medicineに結果を公開しました。この報告を元にBBCが、イギリスの新薬開発の現状や取り組みについてを報道しました。
研究チームは、1971年から2011年の間に、どのくらいの新薬が開発され、市場に出たかを調査しました。年間で発表される新薬の種類は、最低で9剤、最高で34剤で、平均は23剤でした。
新薬の開発は1998年から2006年の間で落ち込んでいましたが、その後は回復傾向にあるそうです。これまで、新薬の開発状況について行われてきた調査は、比較的短期間を対象にしたものだったため、長期的に見ればゆるやかながらも増加していることは見過ごされていたようです。
新薬開発に関わる費用の高騰は製薬会社にとって頭の痛い要素です。
新しい薬が開発されることで、病気に苦しむ多くの人たちを救うことができます。わずかながらでも、活性化されているというのは喜ばしい状況です。
イギリスでは、新薬開発のコストが増えているのに、新薬開発への投資が減っているという皮肉な結果が生まれています。
特に、製薬会社と学術機関との提携によって新しい薬が生まれる開発初期段階では、費用がかかるものの、これが本当に臨床に活かされるかどうかの保証がないため、投資のリスクがあるとされています。
この状況を改善するために、イギリスのがん研究所(Cancer Research Technology)では500万ポンドの資金提供を行い、新薬の発見の初期段階に役立てられるようにしています。これにより、治験を行い、投資価値が確認できるまでの溝を埋めることができるからです。
難治性の病気や慢性病に悩む患者さんは、新しい薬の登場を心待ちにしています。新薬の開発のハードルをなくす取り組みは、イギリスのみでなく世界中の課題となるでしょう。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Decline in new drug launches
http://bmjopen.bmj.com/content/3/2/
Falling drug breakthroughs ‘a myth’
http://www.bbc.co.uk/news/