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体内の硫化水素生成に新たな経路を発見 腎疾患治療に可能性

読了時間:約 54秒
2013年03月04日 PM08:13

虚血再灌流障害が軽減

毒ガスで有名な硫化水素(H2S)だが、脳の神経伝達調節因子としての働きが認識されて以来、神経細胞を酸化ストレスから保護する機能、心筋・腎臓の虚血再灌流障害から保護する機能などが次々に明らかになっている。H2Sが生産される経路はこれまでにL-システインからの3経路がわかっていたが、今回の研究で国立精神・神経医療研究センターは第4のD-システインを基質とする合成経路を発見した。

この経路に関わる酵素は小脳と腎臓にのみ局在するため、両臓器にD-システイン経路のH2S合成が多く、特に腎臓ではL-システイン経路の80倍となっていることがわかった。興奮毒性があり大量投与は危険なL-システインに対して、D-システインは毒性が低く安全にH2Sを供給できることから、マウスに経口投与したところ、腎臓の虚血再灌流障害が顕著に軽減した。

H2Sに期待される疾患治療

H2Sは脳臓器間ネットワークを介して細胞保護因子、神経伝達調節因子として臓器の恒常性維持に必要と考えられている。また、酸化ストレスで低下したグルタチオンの生産を上昇させて抗酸化作用を回復する作用やインスリン分泌調整機能、膵島ベータ細胞の保護作用なども報告されている。副作用が少なく効果的にH2Sを生成するD-システインには、慢性および急性腎障害や糖尿病性腎症の予防の治療薬、移植腎の保護薬への適用が期待できる。(馬野鈴草)

▼外部リンク

国立精神・神経医療研究センター
http://www.ncnp.go.jp/

 

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