まれな新生児発症例
国立感染症研究所は11月号のレポートで、新生児の日本紅斑熱の症例を報告した。8月の長崎県での症例だが、好発症年齢が60代以上という同症ではおそらく最年少発症と考えられることから周知したという。
日本紅斑熱は、病原体リケッチアを保有するマダニによる媒介性疾患。ダニの生息域に限られていたが、近年発症数増加とともに発生地が広がっている。
報告例は出生40週女児。発熱・発疹・嘔吐で入院、初めは新生児敗血症が疑われたが、発熱・皮疹・刺し口からリケッチア感染症の疑いに転じた。両親の文書同意を得たのち、ミノサイクリンの投与を開始。国立感染症研究所から検体提出後5日後に細菌のリケッチア・ジャポニカが検出されたとの報告がきて、日本紅斑熱と診断した。
診断・治療の経緯
今回は、患児の頭頂部を刺咬するダニが目撃された点、刺し口が見つけやすかった点、特徴的な手掌・足底の紅斑を認めた点、過去にも日本紅斑熱の発生が認められた地域だった点などから、日本紅斑熱を鑑別診断に挙げられた。このため迅速な治療につながり、早期の治癒にいたった。
本症の第一選択薬、テトラサイクリン系抗菌薬は小児には歯牙黄染などの副作用があるが、日本紅斑熱は治療が遅れた場合、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併して死亡する例も報告される。診断後、テトラサイクリン系抗菌薬の早期使用が重要になる。
高齢者に好発し小児に少ない理由は、野山や畑でマダニに刺咬される機会の多寡によると考えられる。本例では、同居する祖父母が畑から自宅へマダニを持ち込み、患児が刺されたと推測される。小児、特に新生児発症では、家族の生活歴も確認する要がある。
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