日本医師会は21日、薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会で高脂血症治療薬「エパデール」のスイッチOTC化が了承されたことについて、症状がない生活習慣病の自己管理は危険などとして、生活習慣病領域のスイッチOTC化に反対する見解を発表した。都内で記者会見した中川俊男副会長は、「生活習慣病の患者が自己判断で医薬品を使用することは非常に危険。エパデールを認めれば、アリの一穴になる可能性がある」と懸念を表明した。
日医は、10月の部会でもエパデールのスイッチOTC化に反対を表明したが、多数決で押し切られた経緯がある。見解では、「医薬品は医師の管理下で服用すべき」とし、安易な購入が食事・運動療法の取り組みを後退させ、結果的に症状の発現や悪化につながると懸念を示した。
また、「疾患の診断・治療は、医師のみが行う行為」とし、スイッチOTC化により、患者の症状を聞いた薬剤師が服用可否を判断することを問題視。第1類医薬品でさえ、薬剤師による文書を用いた十分な説明がなされていないとの厚労省調査結果を挙げ、エパデールが第1類医薬品として、セルフチェックシートをもとに薬剤師の判断で販売されることに疑問を示した。
さらに、中性脂肪値が150~300mg/dLの場合に服用可としていることに対し、根拠が乏しいと指摘した。
中川氏は、「中性脂肪値が高いだけでは症状が出ないため、手遅れになりかねず、エパデールが他の生活習慣病治療薬のスイッチOTC化に波及するアリの一穴になる可能性がある」と危惧を示した。
見解では、一般薬部会の手続きにも問題があると指摘。日医の慎重意見に十分な説明のないまま、非公開の中で採決に至ったことに遺憾の意を示し、「十分に議論を尽くした上で、納得のいく結論を出すべき」とした。中川氏は「まずは部会で議論を尽くすべき。納得できれば、賛成する可能性もある」と述べた。
その上で、スイッチOTC化そのものではなく、あくまでも生活習慣病分野に限定して反対する姿勢を明確にし、生活習慣病のスイッチOTC化については、厚労省に議論の場を求めていくとした。