京都大学医学部の木下彩栄教授らの研究チームが、運動療法がアルツハイマー病の認知機能に効果を与えるメカニズムの一端を解明し、記憶障害の改善には食事療法よりも運動療法の方が有効であることを比較、発表した。
アルツハイマー病は脳内の神経細胞に障害を起こすタンパク質「アミロイド」が蓄積し、記憶障害が起きると考えられ、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病との関連が疫学的に注目されていた。
高齢化が進む日本では、200万人異常の認知症患者が確認されており、その中でもアルツハイマー型の認知症は進行を止める治療薬がないため、介護負担の面からも社会問題になっている。
今回、研究チームはアルツハイマー病のマウスを使い食事や運動、教育といった項目を介入されることでどのような効果を得られるか調査を行なった。
この調査ではアルツハイマー病のモデルマウスを使い約5ヶ月の間、高脂肪食のみを食べさせたマウス、高脂肪食を食べながら運動させたマウス、途中から食事を普通食に変えたマウス、途中から普通食に変え運動させたマウス、の4つのグループに分け調査を行なった。
その結果、高脂肪食で運動していたマウスは高脂肪食で運動しなかったマウスよりも、脳内のアミロイド蓄積量が半分程度に減少しており、普通食で運動していたマウスと同じ程度の数値だった。
さらにマウスが調査前に覚えた迷路から出るタイムを測ったところ、アミロイド蓄積量と同様に、食事の変化よりも運動していたかどうかが結果に大きく影響を与えていることがわかった。
これらの結果から、高脂肪食のままでも運動をしていれば普通食に切り替えるだけよりも記憶機能に効果があり、食事療法よりも運動療法を優先して介入させるべきだと発表した。
研究の詳細な内容は、「The Journal of Biological Chemistry」に掲載された。
▼外部リンク
京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/
The Journal of Biological Chemistry での発表論文
http://www.jbc.org/content/
アルツハイマー型認知症治療で使用される適用処方薬
http://www.packageinsert.jp/disease/list/8842549